yocinovのオルタナティブ探訪

安価で安全な代替・補完医療を求めて

「高濃度ビタミンC療法<実状編>」

4回は「高濃度ビタミンC療法<実状編>」をお送りしたいと思います。

 

3回までで調べたように、高用量ビタミンC療法あるいはビタミンCサプリの抗がん作用とがん予防効果には、確固としたエビデンスがないと言わざるを得ない状況です。

 

それでは、このような現状の中で実際に高濃度ビタミンC療法を推奨しているグループはどの様な背景でそれを実施しているのでしょうか?大変に興味があります。

 

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まずは点滴療法研究会(会長:柳澤厚生医師)のホームページ(http://bit.ly/YY0jhJ)を覗いてみましょう。

 

2回で挙げた肯定系の論文とin vitroのデータを並べて、「高濃度ビタミンC療法には抗がん作用がある」ことがまるで既成事実であるかのような文言が並んでいます。まあそれは予想されたことではありますが。

 

注目すべきは「この治療が適している方とは」の項目です。「〇〇の人たちは高濃度ビタミンCを受けた方が良い」と言っているわけですから、それなりの理由がなくてはなりません。順に見てみます。

 

(1)標準的ガン治療が無効の場合

2回でも言いましたが、もう一度言います。標準治療に無効ながんの患者さんの生存期間を延長したという報告は、2040年前のポーリング&キャメロングループの3報と日本のグループの1報しかないのです。これらは何れも、ランダム割付を伴わない過去のコントロールを伴うコホート研究であり、エビデンスレベルは2bです。それ以後の再現性を証明した質の高い追従研究はなく、到底有効ですよとは言えないのです。

PNAS 1976; 73: 3685-3689. (http://1.usa.gov/YT2vRM), PNAS 1978; 75: 4538-4542. (http://1.usa.gov/YT2yg8)Int J Vitam Nutr Res Suppl. 1982; 23: 103-113. (http://1.usa.gov/ZXBsXP)Med Hypotheses. 1991; 36: 185-189. (http://bit.ly/ZXvN3X)

 

(2)標準的ガン治療の効果をより確実にする

高用量ビタミンCを標準治療と併用すると、標準治療よりも効果が改善したとする論文はこの世に存在しません。かりに、あくまでもかりに百歩譲ったとしても第2回で挙げた膀胱癌に対する「BCG膀胱注入+高用量マルチビタミン(J Urol. 1994; 151: 21-26. (http://1.usa.gov/X9lxYM))のみです。

 

(3)標準的ガン治療の副作用を少なくする

動物実験では、ビタミンC抗がん剤の副作用を軽減するという報告が幾つかあります。実際に人を対象とした化学療法ではどうでしょうか?探してみるといくつかヒットしました。中には好意的な結果を報告しているものもあります。しかし、何れもビタミンCを含むサプリであり、「高用量ビタミンCが標準的がん治療の副作用を少なくする」ことを示した報告は皆目見当たりません。

Mutat Res. 2001; 498: 145-158.http://bit.ly/142TsUV

シスプラチンを含む化学療法を受けた進行期癌において、ビタミンCを含む抗酸化サプリはその毒性を軽減しない。

Eur J Cancer. 2004; 40: 1713-1723.http://bit.ly/142qT9X

シスプラチンを含む化学療法を受けた進行期癌において、ビタミンCを含む抗酸化サプリはその毒性を軽減しない。

Jpn Heart J. 1996; 37: 353-359. http://1.usa.gov/11EQ5Q0

ビタミンCを含む抗酸化サプリは放射線療法による心臓毒性から保護する効果があるかもしれないが、化学療法による毒性は保護しない。

Head Neck. 1994; 16: 331-339.http://1.usa.gov/X9joMB

ビタミンCを含む抗酸化サプリは、口腔癌に対する化学放射線療法中の口腔粘膜障害を減じるかもしれない。

Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1993; 26: 413-416.http://1.usa.gov/ZXqUYw

ビタミンC外用は、脳腫瘍に対する放射線照射に伴う放射線性皮膚炎を軽減しない。

 

(4)良好な体調を維持しながら寛解期を延長させる

QOLを改善するという報告は3報ありました。それでも「高濃度ビタミンCが終末期がん患者のQOLを改善する」とするには十分なエビデンスではありませんし、決して「QOLを改善する=抗がん作用がある」ではありません。

    J Korean Med Sci. 2007; 22: 7–11. (http://1.usa.gov/YVAvgj)

39人の終末期悪性腫瘍患者に高用量ビタミンCを静脈投与したところQOLが改善した、というものですが、単一群の試験でありエビデンスレベルは4です。

In Vivo. 2011; 25: 983-990. (http://bit.ly/X5nmR8)

125人の乳癌患者に対する化学療法または放射線療法中に、高用量ビタミンCの静脈投与を行いQOLが改善した、というランダム割付を伴わない同時コントロールを伴うコホート研究でエビデンスレベルは2aです。

Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2004; 13: 1651-1659. (http://bit.ly/15UUVLe)

40人の悪性腫瘍に伴う食欲不振や全身衰弱に対して、ビタミンCを含む抗酸化サプリの内服(静脈投与ではありません)はQOLを改善した、というランダム化比較試験であり、エビデンスレベルは1bです。

 

(5)代替治療として希望する場合

私はこれが最も言ってはならないフレーズだと思っています。あ・な・たが希望したからやってるんですよ」「もう他に治療は残されていないんでしょ?あ・な・たが望むのなら自己責任でうちの治療に(ダメもとで)かけてみませんか」の意図が透け透けでドギマギしちゃうレベルです。ただの責任転嫁です。まっとうな医療者が吐く言葉ではありません。どんなにパターナリズムと言われようが、これは譲ることができません。

 

最後に「有効な抗ガン剤や放射線治療がある場合は併用を推奨します」の一文が見えます。これも定番中の定番の常套句です。なにゆえエビデンスが全く存在しない併用療法を勧めるのでしょうか?答えは明確です。最期(死ぬ)まで責任を持って患者さんの面倒を診ることができないからです。かかりつけの病院で標準治療を受けてさえくれていれば、体調が悪くなった時にそちらの病院に丸投げすることができるからです。もっと言えば、たとえ体調の悪化が高濃度ビタミンCの副作用であった場合にだって丸投げしかねません。「あなたが元気で金づるになる間は私たちのところに通ってくださいね、でも死にそうになって金づるとしての価値がなくなったら来なくていいですからね」と言っているのと同義語なのです。断じて患者さんのためを思ってではありません。自己保身のためです。

 

次に高濃度ビタミンC点滴療法学会(理事長:宮澤賢史医師)のホームページ(http://bit.ly/YLBSnF)も覗いてみます。

 

膨大な量の高濃度ビタミンC療法に関する歴史、機序、効果、適応などの記載が丁寧に記載されています。内容は非常に膨大ですが、ホームページの大半が高濃度ビタミンCの優しさで彩られています。バファリン®に含まれる優しさなんか遥かに超越しています。優しさに溢れすぎて読むのがめんどくさくなるレベルです。

 

適応については、『①現在の病気に対し有効な治療法がない②従来の治療方法だけではうまくいかない③現在の治療と併用してIVC(高濃度ビタミンC療法)を行なうことでよりいっそうの改善を期待したい』となっており、点滴療法研究会と目クソ鼻クソです。

 

点滴療法研究会と違うのは、「注意事項」「免責事項」を設けていることです。文言をそのまま写します。

 

『御注意:すでに存在する有効な癌治療にとって代わるものではありません。進行がんに対して、抗ガン剤や放射線治療の副作用を軽減し、効果をより高めるものと御考えください。』

 

『免責事項:本サイトは、分子薬物研究会によって運営される公式サイトです。資料・情報の正確性・完全性について、いかなる保証もいたすものではありません。本サイトはIVC治療における様々な情報の提供が目的であり、特定の治療法を推奨するものではありません。本サイト内の情報につきましては、ご自身の責任の元に施行して頂きますようお願いいたします。IVC治療については、年々新しい情報が出されているために、サイト内の情報もそれに伴い更新されるべきものと考えてください。他の医療と同じく、このIVC治療にも予測不可能な現象が生じることがあることを理解してくださいますようお願いいたします。実際の臨床ではプロトコールとは異なる内容の治療を行わざるを得ないケースもあり、こうした場合も含め全ては担当医師の判断が優先されること、そして全責任もその医師にあることをご承知おきください。本サイト上の資料・情報が不正確・不完全であることが原因で発生した損失や損害について、運営者は一切の責任を負いかねます。』

 

慎重といえば確かにそうなのですが、どうも責任を回避するための布石にしか見えず、より周到でより姑息でより老練でより醜悪な文言の羅列と思います。いじめで自殺をした学生が通っていた学校の校長が、何よりも真っ先に自分たちの正当性を主張するのを見た時に抱くのと同質の嫌悪感を抱いてしまうのは私だけでしょうか?

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自分で勉強するまでは「なにが高濃度ビタミンC療法だ?レモンのかたまりを何個食ったってがんなんか治るはずねえだろ!」と思っていたのですが、今回の勉強により、高用量ビタミンC療法自体は、抗がん作用や延命作用においてというよりは、QOLの改善作用あたりに生き残る道があるのではないか、と思うようになりました。頭ごなしの否定的な姿勢は自省しなくてはなりません。それらはさらに良質な臨床試験で検証されても良いと思います。それが実証されれば患者さんにとって本物の福音となるはずです。

 

私が単純に思うのは、「そんなに高濃度ビタミンC療法の抗がん作用を信じているのなら、保険診療ができるように働きかける努力をすればいいのに」ということです。是非、ランダム化比較試験を立案、実行して、その効果を立証する努力をしてください。このような研究会を立ち上げて、お金を儲けるシステムを構築する実行力があれば十分に可能だと思います。そのステップなくして、蔑まれた視線と詐欺の誹りを免れる方法はないのだと思います。それをしないのは、あくまでも代替医療のままでいたい、あくまでも自由診療のままでいたいからです。高濃度ビタミンCに対する信仰ですらなく、あくまでも金儲けのネタだからです。

 

特に、高濃度ビタミンC療法には、「ノーベル賞受賞者のお墨付き」でなんだか「キャッチ―」でいかにも「体に良さそう」で「副作用(リスク)が少なく」て「お手軽」という、最高の条件が整っています。数ある代替医療の中でも最も初期投資や起業努力や訴訟リスクが少なくてすむ方法の一つでしょう。悪質で短絡的で低俗な医療者が飛付くには最も好都合なのです。

 

実際にそれを行っている人間が、どんなに誠実さと勤勉さで取り繕うとも正当性は微塵もなく、身体的に弱い立場の人たちの深層心理を利用して金儲けをしているモラル・ハザードの権化に過ぎないのです。中には「僕らはワラにもすがる末期がん患者さんに希望の光を与えてあげているんだ」とお門違いに胸を張っている人間まで出てくる始末です。

 

高濃度ビタミンC療法を含む多くの代替医療に対する批判は、それ自体が批判の対象なのではなく、それを扱う人間に対する批判であることを忘れてはいけません。

「<別冊>ビタミンCは発がんを予防できるか?」

3回では、高用量ビタミンC療法とは少々離れますが、「<別冊>ビタミンCは発がんを予防できるか?」をお送りしたいと思います。

 

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サプリの発がん予防効果を評価するにはいくつかの手法があります。

 

1つ目は、実際にがんを発症した人(ケース)と、背景を合せた発症していない人(コントロール)のビタミンC摂取状況を比較する「ケース・コントロール研究(CCS)」です。

 

2つ目は、ビタミンCを多く摂取する習慣の群(コホート)、あるいは少なく摂取する習慣の群を追跡し、発がん率を比較する「前向きコホート研究(PCS)」です。

 

そして3つ目は、対象となる人をビタミンCのサプリを飲ませる群と飲ませない群にランダムに割付けて、2群間の発がん率を比較する「ランダム化比較試験(RCT)」です。

 

順にエビデンスレベルは上がります。

 

主体はCCSなのですが、フランスの”The SU.VI.MAX Study”や、中国の“The Linxian trials”など、数万人規模のRCTも存在します。本来は幾つかのサブグループ解析もあるのですが、大まかな結論が分かるように「がんを抑制するかも」という結論のものを赤字「がんを抑制しないかも」という結論のものを青字で表記しました。領域ごとに見てみましょう。

 

癌全体

JAMA. 2009; 301: 52-62.http://bit.ly/X93Kvs

RCT。ビタミンCを含む抗酸化サプリ8年摂取は癌罹患率を抑制しない。

Natl Cancer Inst. 2009; 101: 14-23.http://bit.ly/13SsWNQ

RCT。女性においてビタミンCを含む抗酸化サプリ9.4年摂取は癌罹患率と癌死亡率を改善しない。

Arch Intern Med. 2004; 164: 2335-2342.http://bit.ly/13SqtTJ

RCT (The SU.VI.MAX Study)。ビタミンCを含む抗酸化サプリ7.5年摂取は男性においては発癌を抑制するかもしれないが、女性では抑制しない。

Arch Intern Med. 1998; 158: 1181-1187.http://bit.ly/Y32QVg

RCT地中海料理はガンとガン死を抑制するかもしれなく、それにはビタミンCが関与している可能性しているかもしれない。

Am J Epidemiol. 1995; 142: 1269-1278.http://bit.ly/X8USLI

PCS。食事由来のビタミンCのは中年男性の癌と心血管系死を抑制するかもしれない。

J Natl Cancer Inst. 1993; 85: 1483-1492.http://bit.ly/XbvCUZ

RCT(The Linxian trials)。ビタミンCサプリは全死亡、癌死亡を抑制しない。

 

悪性リンパ腫

Nutr Cancer. 2012; 64: 245-254.http://bit.ly/ZwwzSQ

CCS。女性においてビタミンCDLBCLのリスクを抑制するかもしれない。

 

脳腫瘍

Environ Health Perspect. 1998; 106 Suppl 3: 887-892.http://bit.ly/11ns1kr

CCS。妊娠期のビタミンCを含むマルチビタミンは小児の脳腫瘍を抑制するかもしれない。

Cancer Causes Control. 1994; 5: 177-187.http://1.usa.gov/11GnGZI

CCS。妊婦のビタミンCサプリは乳幼児の脳星状細胞腫を抑制しない。

甲状腺癌

Cancer. 1997; 79: 2186-2192.http://1.usa.gov/Y36Vc1

CCS。ビタミンCは甲状腺癌を抑制するかもしれない。

 

口腔癌、喉頭癌、下咽頭癌

Int J Cancer. 2005; 117: 992-995.http://bit.ly/15US70F

CCS。喉頭癌、下咽頭癌発症前の食事由来ビタミンCが多い人は予後良好の可能性。

Nutr Cancer. 1994; 21: 223-232.http://bit.ly/XbvaWY

CCS。口腔癌、喉頭癌患者において、食事由来のビタミンCは二次性発癌を抑制するかもしれない。

Nutr Cancer. 1990; 14: 219-225.http://bit.ly/ZXxbDI

CCS。黒人において食事由来のビタミンCは口腔癌、喉頭癌を抑制するかもしれない。

 

肺癌

Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2006; 15: 1562-1564.http://bit.ly/141XLzY

RCT(The Linxian trials)。ビタミンCを含むサプリは肺癌死を抑制しない。

Am J Epidemiol. 2004; 160: 68-76.http://bit.ly/15V6eDo

PCS。喫煙男性では食事由来のビタミンCを含む抗酸化物質は肺癌を抑制するかもしれない。

 

皮膚癌、悪性黒色腫

J Nutr. 2007; 137: 2098-2105.http://bit.ly/13UpHWn

RCT(The SU.VI.MAX Study)。ビタミンCを含む抗酸化物質サプリ7.5年摂取は、女性における皮膚癌(HR=1.68; P = 0.03)、特にメラノーマ(HR = 4.31; P = 0.02)のリスクを増やすかも知れない。

Eur J Cancer. 2010; 46: 3316-3322.http://bit.ly/13Sqx5O

RCT (The SU.VI.MAX Study)。ビタミンCを含む抗酸化サプリで上昇した皮膚癌のリスクはその内服の中断により改善する。

 

子宮癌

Int J Gynecol Cancer. 2010; 20: 398-403.http://bit.ly/13SrnQ4

多施設横断研究。ビタミンCは子宮頸部上皮内腫瘍を抑制するかもしれない。

Cancer. 1993; 71: 3575-3581.http://1.usa.gov/Xbwmth

CCS。食事由来のビタミンCは子宮内膜癌を抑制するかもしれない。

 

乳癌

Breast Cancer Res Treat. 2010; 119: 753-765.http://bit.ly/13SrHhB

PCS。ビタミンCを含む抗酸化物質は乳癌を抑制しない。

Int J Cancer. 1996; 65: 140-144.http://1.usa.gov/X8UwEI

CCS。ビタミンCは乳癌を抑制しない。

 

肝臓癌

J Natl Cancer Inst. 2007; 99: 1240-1247.http://bit.ly/X98p0i

RCT(The Linxian trials)。ビタミンCは肝臓癌死を抑制しない。

 

膵臓癌

Ann Oncol. 2011; 22: 202-206.http://bit.ly/13Sr73q

CCS。ビタミンCは膵臓癌を抑制するかもしれない。

J Gastroenterol. 2005; 40: 297-301.http://bit.ly/142mPH1

CCS。食事由来のビタミンCは日本人の膵臓癌を抑制するかもしれない。

Int J Cancer. 1992; 51: 365-372.http://1.usa.gov/ZXuXUN

CCS。食事由来のビタミンCは膵臓癌を抑制するかもしれない。

 

胃癌

J Natl Cancer Inst. 2007; 99: 137-146. http://bit.ly/13UqYws

RCT。ビタミンCを含む抗酸化サプリ3年摂取は胃癌を抑制しない。

J Natl Cancer Inst. 2006; 98: 974-983.http://bit.ly/141Ygdt

RCT。ビタミンCを含むサプリは胃前癌病変、胃癌を抑制しない。

Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2005; 14: 2087-2092.http://bit.ly/Xfw9Aa

PCS。喫煙男性においてビタミンCは非噴門部胃癌を抑制するかもしれない。

 

食道癌

J Cancer Res Clin Oncol. 2002; 128: 575-580.http://bit.ly/15VbwPc

CCS。男性においてビタミンCは食道癌を抑制するかもしれない。

Cancer Res. 1994; 54(7 Suppl): 2029s-2031s.http://bit.ly/11Gn2vu

RCT(The Linxian trials)。ビタミンCは食道癌を抑制しない。

 

大腸癌:

Nutr Cancer. 2012; 64: 798-805.http://bit.ly/ZwvElt

CCS。食事由来のビタミンCは日本人男女の大腸がんリスクを抑制しない。

 

腎細胞癌

Int J Cancer. 2007; 120: 892-896.http://bit.ly/XeF58O

CCS。ビタミンCは腎細胞癌を抑制するかもしれない。

Int J Cancer. 1996; 65: 67-73.http://1.usa.gov/X8UIUH

CCS。緑黄色野菜は腎細胞癌を抑制するかもしれないが、ビタミンCサプリは抑制しない。

 

前立腺癌

Acta Oncol. 2009; 48: 890-894.http://bit.ly/X5vqRO

CCS。ビタミンCは前立腺癌を抑制しない。

JAMA. 2009; 301: 52-62.http://bit.ly/X93Kvs

RCT。ビタミンCを含む抗酸化サプリ8年摂取は前立腺癌を抑制しない。

J Natl Cancer Inst. 2006; 98: 245-254.http://bit.ly/13QzsES

PCS。食事あるいはサプリによるビタミンCは前立腺癌を抑制しない。

Int J Cancer. 2005; 116: 182-186.http://bit.ly/142neJr

RCT (The SU.VI.MAX Study)。ビタミンCを含むサプリは前立腺癌を予防しない。

 

卵巣癌

Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2004; 13: 1521-1527.http://bit.ly/15UVlRX

CCS。食事由来のビタミンCは卵巣癌を抑制するかもしれない。

 

膀胱癌、尿路上皮癌

Br J Cancer. 2002; 87: 960-965.http://bit.ly/142IIWA

PCS。食事由来のビタミンCは喫煙男性の膀胱癌を抑制しない。

Am J Clin Nutr. 2012; 96: 902-910.http://1.usa.gov/ZwviLu

CCS。血中のビタミンC濃度の高低は尿路上皮癌の発症に影響しない。

 

世界中の臨床試験を収集して統計学的に統合して質的評価をする「コクランライブラリー」も探してみました。見つかったのは肺癌(http://bit.ly/XdY2xF)と消化器癌(http://bit.ly/YKOCFb)で、何れもビタミンCによる予防効果を否定しています。

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全部に目を通すのには嫌気がさすほどの数の報告があります。喉頭癌や下咽頭癌、子宮癌、膵臓癌では肯定的な論調のものが多く、乳癌、前立腺癌、膀胱癌では否定的な論調のものが多い印象はありますが、各々のバイアスも十分に検討できていませんし、大規模なメタ解析やシステマティックレビューがないため、結論付いたことは言えません。しかし、皮膚癌にいたっては、ビタミンCを含む抗酸化サプリが女性においてリスクを増やす可能性まで示唆されており、「がんを抑えられるかもしれないんだって」とか「体にいいに決まってんでしょ」とか「本田翼ちゃんてカワイイよね」というだけのモチベーションで無闇にビタミンCを摂取し続けるメリットはあったとしてもとても少ない気がします。

 

加えて、ビタミンCには「女性における皮膚癌」のリスクに寄与している可能性の他にも、いくつかのリスクとの関連が示唆されています。男性において白内障のリスクが1.21(Am. J. Epidemiol. 2013; 177: 548-555. (http://bit.ly/Zw3839))、多量のビタミンCサプリ(1日約1000mg)の使用者は、非使用者と比べ腎結石の発症リスクが1.92(JAMA Intern Med. 2013;173(5):386-388. (http://bit.ly/Zw51wN))、喫煙肺癌男性においてビタミンCとビタミンEを同時摂取すると肺結核のリスクが高まる(Br J Nutr. 2008; 100: 896-902. (http://bit.ly/X96qJt))などが挙げられます。さらに、G6PD欠損症ではビタミンCが溶血を引き起こすことは知られていますが、その水保持作用から心不全、浮腫、腹水、透析患者では禁忌とすべきとする論文(Ann NY Acad Sci. 1987; 498: 1145-454. (http://bit.ly/YTWN85))もあるので、盲信的な長期摂取には注意が必要そうです。

 

続きは第4「高濃度ビタミンC療法<実状編>」

 

 

 

 

 

「高濃度ビタミンC療法<臨床試験編>」

2回では「高濃度ビタミンC療法<臨床試験編>」をお送りしたいと思います。

 

静脈投与至上主義に辿りついた高用量ビタミンC療法ですが、その抗がん作用に期待した研究者たちが、盛んに臨床試験を行うまでに成長しています。

 

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再びスポットライトを浴びるようになった後(浴びる前のもありますが)、数多くの高用量ビタミンC静脈投与を組み込んだプロトコールが臨床試験として行われ、また既に報告されています。おそらく全て拾い切れていないとは思うのですが、それでも下に列挙したようにとにかくたくさんあります。

PLoS One. 2012; 7: e29794. (http://bit.ly/Zww8YO):膵臓癌

Cancer. 2012; 118: 3968-3976. (http://bit.ly/X5jvn5):骨髄増殖性腫瘍

Cancer. 2012; 118: 2507-2515. (http://bit.ly/X5odRU):多発性骨髄腫

Am J Hematol. 2011; 86: 796-800. (http://bit.ly/X5p2dl):骨髄異形成症候群と急性骨髄性白血病

Eur J Haematol. 2009; 82: 433-439. (http://bit.ly/13SsgIl):多発性骨髄腫

Biol Blood Marrow Transplant. 2008; 14: 1401-1407. (http://bit.ly/13UnSIP):多発性骨髄腫

Hematol Oncol. 2009; 27: 11-16. (http://bit.ly/13Uo5fh)悪性リンパ腫

Melanoma Res. 2008; 18: 147-151. (http://bit.ly/X96cSP)悪性黒色腫

Acta Oncol. 2007; 46: 557-561. (http://bit.ly/13UqAy0):大腸癌

Clin Cancer Res. 2007; 13: 1762-1768. (http://bit.ly/X99yF7):多発性骨髄腫

Haematologica. 2006; 91: 1722-1723. (http://bit.ly/XeEow6) :多発性骨髄腫

Br J Haematol. 2006; 135: 174-183. (http://bit.ly/141XxZS) :多発性骨髄腫

Med Oncol. 2006; 23: 263-272. (http://bit.ly/141Yrp7) :多発性骨髄腫

Cancer. 2006; 106: 2459-2465. (http://bit.ly/141ZuFt):前立腺癌

Clin Cancer Res. 2002; 8: 3658-3668. (http://bit.ly/142Iejh) :多発性骨髄腫

Mol Aspects Med. 1994; 15 Suppl: s231-240. (http://1.usa.gov/Xbvwg6):乳癌

 

また、現在進行形の臨床試験も数多く存在します。(http://1.usa.gov/YM1rVJ)

 

現在進行形のものも含めてとにかくその守備範囲の広さには目を瞠るものがあります。悪性腫瘍なら何でもありといった状況です。こと私の本業である造血器腫瘍の多さには一時的に動揺が隠せなくなり、ひとり挙動不審になりかけたのですが、おそらくは手軽で、副作用が少なさそうなので組み込みやすいのでしょう。気を取り直して先に進みます。

 

それでも「こんなにもビタミンCが取り上げられているのだから抗がん作用があるに違いない!ビタミンC万歳!ビバ・ビタミンC!」と諸手を挙げて狂喜乱舞するのはやや早計です。なぜなら、これらの全てが「化学療法+高用量ビタミンC」の単一群での臨床試験であって、高用量ビタミンCを追加したことによる純粋な相加的あるいは相乗的な効果を検証するためのデザインではないからです。ビタミンCの真の実力のほどを知るには「プラセボ vs. 高用量ビタミンC単独」あるいは「化学療法単独 vs. 化学療法+高用量ビタミンC」のランダム化比較試験が必要なのです。

 

一方で、Web上で「ビタミンCの抗がん作用を明示している」と頻回に引用されている幾つかの文献がありますのでご紹介しましょう。

 

代表的な文献は「CMAJ 2006; 174: 937-942. (http://1.usa.gov/YTcS88)」です。高用量ビタミンC療法を含めた代替療法のみで、病気のコントロールができたぜ、イエス!カモーン!という、51歳の腎細胞癌患者さんと49歳の膀胱癌患者さんと66歳の悪性リンパ腫患者さんの3名がビタミンC御三家ばりに紹介されています。なかなか魅力的です。しかしよくよく読んでみると、このお三方は一部手術や放射線療法を受けていたり、その他にも大量の代替療法を同時に受けたりしています。なので、ビタミンC単独の実力とは言えません。それから自然治癒の可能性も捨てきれません。

 

加えて、症例報告というのは、「ある治療が有効である」という証拠としては極めて脆弱なものなのです。よく考えてみてください。もし「東大病院には宝くじで3億円当たった入院患者さんが3人いる」という話を聞いたからといって、「私も3億円欲しいから東大病院に入院させて」と思うでしょうか?いや、高額当選が多いと噂される券売所には長蛇の列が出来るそうですから、そのように思われる方もいらっしゃるかもしれません。では、もう少し医療に近い喩えにしましょう。「診断はついてなくて何だかよく分からないけど化学療法しちゃったら良くなった3例」の報告ならどうでしょうか?「私の時も何だかよく分からない時は化学療法しちゃって~ウフ」と思うでしょうか?症例報告はあくまでも「こんな珍しい人がいましたよ~ん、頭の隅っこにでも入れといてちょ」というだけのものなのです。科学的な論拠の強さを示すエビデンスレベルhttp://bit.ly/X9Iuc7)も6段階中の5に過ぎません。

 

他にも高用量ビタミンC療法の抗がん作用を立証しているとされる文献が幾つかあります。

 

J Korean Med Sci. 2007; 22: 7–11. (http://1.usa.gov/YVAvgj)」では、終末期悪性腫瘍患者に高用量ビタミンCを静脈投与したところQOLQuality Of Life、生活の質)が改善した、としています。

 

Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2004; 13: 1651-1659. (http://bit.ly/15UUVLe)」では、悪性腫瘍に伴う食欲不振や全身衰弱に対して、ビタミンCを含む抗酸化サプリの内服(静脈投与ではありませんが)は、QOLquality of life, 生活の質)を改善した、としています。

 

Int J Med Sci. 2008; 5: 62-67. (http://bit.ly/13UozSk)」では、標準治療に抵抗性の前立腺癌に対するビタミンCとビタミンKの内服(これもまた静脈投与ではありません)は、PSA(腫瘍マーカー)を改善した、としています。

 

In Vivo. 2011; 25: 983-990. (http://bit.ly/X5nmR8)」では、高用量ビタミンCの静脈投与は、乳癌に対する化学療法、放射線治療中のQOLを改善した、としています。

 

J Clin Pharm Ther. 2012; 37: 22-26. (http://bit.ly/13SpjaN)」では、ビタミンCを含む抗酸化サプリの内服(これもまた静脈投与ではありません)は、乳癌に対する化学療法によるDNAダメージから保護する作用がある、としています。

 

もう一つは「J Urol. 1994; 151: 21-26. (http://1.usa.gov/X9lxYM)」です。65人の膀胱癌患者に対する「BCG膀胱内注入」と「BCG膀胱内注入+高用量マルチビタミン」のランダム化比較試験で、ビタミンCを含む高用量ビタミン群で再発が有意に低下(91% 41%, p = 0.0014)したとあります。

 

いずれにも何となく喜ばしい響きがあります。特に、QOLの改善なんかは終末期医療においては最重要課題と言っても過言ではありません。しかし、決して「QOLの改善=抗がん作用」ではありません。それに、静脈投与ではなくてサプリだったりとか、マルチビタミンだったりとか、比較試験でなかったりとか、肝心の腫瘍の縮小効果や生存期間の延長効果に関しては記載が見当たらなかったりとか、いささか抗がん作用の実証とするには役不足と言わざるを得ません。

 

つまりは、臨床試験で高用量ビタミンCの抗がん作用(延命効果)を示したのは、いまだに第1回で挙げた2040年前のポーリング&キャメロングループによる3報と日本のグループからの1報のみなのです。

PNAS 1976; 73: 3685-3689. (http://1.usa.gov/YT2vRM), PNAS 1978; 75: 4538-4542. (http://1.usa.gov/YT2yg8)Int J Vitam Nutr Res Suppl. 1982; 23: 103-113. (http://1.usa.gov/ZXBsXP)Med Hypotheses. 1991; 36: 185-189. (http://bit.ly/ZXvN3X)

 

これらは何れも、ランダム割付を伴わない過去のコントロールを伴うコホート研究であり、あくまでもエビデンスレベルは2bなのです。その後、高用量ビタミンC療法の抗がん作用を再現する質の高い追従研究はないのです。しかも、それは可能であればポーリング&キャメロングループ以外のグループからの報告であることが望ましいです。同じグループからだけの再現性のないデータには、「あいつらなんか裏でインチキ操作してんじゃね?」的な疑惑の目を向けられますから。

 

一方、否定的なものもあります。

 

Eur Urol. 2005; 47: 433-440. (http://bit.ly/142nGHC)」では、ビタミンCを含むマルチビタミンのサプリ(これもまた静脈投与ではありませんね)は未治療前立腺癌のPSAを改善しない、としています。正直、PSAが上がるとか下がるとかはあまり重要ではありませんので、これも否定する根拠としては大変弱いです。

 

J Am Coll Nutr. 2005; 24: 16-21. (http://bit.ly/15UTqwL)」では、136人の非小細胞肺癌患者に対する、「paclitaxelcarboplatin」と「paclitaxelcarboplatin+ビタミンC(6.1g/)を含む抗酸化サプリ」のランダム化比較試験の結果が報告されました。おのおの、全奏効率は33% vs. 37%、平均生存期間の中央値は 9ヶ月 vs. 11ヶ月、1年生存率は32.9% vs. 39.1%2年 生存率は11.1% vs. 15.6%で、何れも統計学的な有意差を認めていません。ビタミンC単独ではないし、投与経路も経口内服です。しかし、ランダム化比較試験ではありエビデンスレベルは1bです。

 

Ann Oncol. 2008; 19: 1969-1974. (http://bit.ly/Zw5ZcD)」では、24人の標準治療に抵抗性となった進行期癌と造血器腫瘍患者に対して、高用量ビタミンC静脈投与単独治療を行った、という第1相試験の結果が報告されました。第1相試験は、安全性の評価と第2相試験に向けて至適投与量を決めるためのものですから、治療効果を評価することは主要な目的ではありません。しかし、全奏効率は0%で、QOLの改善もなかったと記載されています。単一群の試験なのでエビデンスレベルは4です。ちなみにこの際に設定された高用量ビタミンCの最大量は、体重1kgあたり1.5g50kgの人なら75g、60kgの人なら90g)という大変な高用量です。

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いづれにしても肯定系も否定系も、結論付けるには臨床試験の質も量も十分ではありません。「高用量ビタミンC療法なんてとんでもない!」という頭ごなしの姿勢はいくぶん自省する必要があるようですが、「現時点ではどちらの側の擁護できかねます」という結論にしか到達のしようがありません。

 

しかし、しかしですね、このレベルの論拠で東スポばりに「高用量ビタミンCには抗がん作用がある(かもしれません)!!」とホームページ上に盛大に書いちゃうのは明らかに言い過ぎですし、それを宣伝材料として客寄せとお金儲けをしているのであれば、それは詐欺行為という誹りを免れることができないと思います

 

続きは第3「<別册>ビタミンCは発がんを予防できるか?」へ。

「高濃度ビタミンC療法<歴史編>」

私は血液内科医です。白血病や悪性リンパ腫や多発性骨髄腫といった造血器腫瘍の患者さんが仕事のお相手で、抗がん剤による化学療法が仕事の大部分を占めています。造血器腫瘍は化学療法に対する反応が良いことが多く、化学療法だけで治ってしまうことあれば、たとえ治癒までいかなくとも健康な人と何ら変わらないレベルでの生活を一定期間確保できることも少なくありません。しかし、その様に上手いこと運ぶ事例ばかりではありませんで、最初から化学療法の効果が乏しかったり、最初は効果があっても徐々に効かなくなったりして、最終的に制御不能に陥りお亡くなりになられることも多いのが現状です。

 

そうした経過の中で、代替医療が話題にのぼることがあります。私には、個人的な苦い経験もあるせいか、どうも代替医療と聞くと眉をひそめてしまう条件反射があるようです。一方で、治る見込みのない方が一縷の望みを抱いて代替医療を求める心情は十分に理解ができます。副作用や経済的な影響が小さいと予測した場合には、目をつぶることもあります。しかし、あまりに高額だったり、安全性に疑問を持たざるを得なかったりするものに関しては「正直に申し上げてお勧めできません」と意見させていただいています。これをパターナリズムと批判されることも少なくないのですが。

 

そんな代替医療の中の一つに「高濃度ビタミンC療法」というものがあります。「ビタミンCは正常細胞には優しく、がん細胞だけをやっつける理想的な抗がん剤」的な心地よい響きの言説を耳にします。点滴療法研究会(http://bit.ly/ZGsOx9)や高濃度ビタミンC点滴療法学会(http://bit.ly/YLBSnF)なるグループが中心になって宣伝しているようです。探せば自費診療でビタミンCを投与してくれるクリニックは全国に数多存在し、みなさんのご自宅の近くにもあるかもしれません。一概には信じられないのですが、ここは「バカバカしい!そんなのトンデモ医療だろ」と頭ごなしに否定するのをぐっとこらえて、疑問を解消するために少し勉強してみることにしました。

 

本当は「少し」じゃなくて「もの凄く」と言いたいところなのですが、「本業の方はどうした!」とお叱りを受けそうなので、あくまでもここは慎ましやかな表現にしておきます。

 

調べれば調べるほど、高濃度ビタミンCにまつわる知られざる事実が出てきて、驚きの連続だったのですが、1回のブログ記事にするにはあまりに情報が膨大なので、何回かに分けて掲載することにします。

 

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1回では「高濃度ビタミンC療法<歴史編>」をお送りします。ちなみに、医学的には「高濃度」ではなく「高用量」なので、今後は高用量ビタミンCと呼ぶこととします。

 

古くから、ビタミンCについての効果・効能に関しては様々な研究がありますが、何といってもその抗がん作用という点で俄然注目を浴びるようになったのは、「ビタミンCの抗がん作用」を発表したのがライナス・ポーリングwikipedia, http://bit.ly/YT1Rn9)だったからでしょう。知る人ぞ知る数少ないノーベル化学賞ノーベル平和賞のダブル受賞者です。ぶっちゃけ私は知りませんでしたけどね。「おぉぉ~ノーベル賞の受賞者が言うことなら無条件で信じていいよね」という声があちこち聞こえてきそうですし、実際に私の心にも同じ感情がむくむくと湧いてきました。いやいや、ノーベル賞受賞者が人格者とは限りません。リュック・モンタニエみたいにトンデモに変身する人もいらっしゃいます。もちろん逆にトンデモだった人が、ノーベル賞受賞者に変身することもあるんですが。

 

さあ、気を取り直してさらに歴史をたどりましょう。

 

彼は、当時in vitro(試験管、つまりは生体外での実験)の研究でビタミンCの抗がん作用を発表していた(Lancet 1972; 1: 542)キャメロン医師と協力して、1976年と1978年に「終末期癌患者に高用量ビタミンCを投与すると生存期間が著明に延長する」という報告を立て続けに発表しました。ちなみに、この際のビタミンC110g10日間静脈投与し、その後は110gを内服するというものでした。

 PNAS 1976; 73: 3685-3689. (http://1.usa.gov/YT2vRM), PNAS 1978; 75: 4538-4542. (http://1.usa.gov/YT2yg8)

 

実は、全く影響力はなかったものの、同様の報告は何と我が国日本からもありました。

 Int J Vitam Nutr Res Suppl. 1982; 23: 103-113. (http://1.usa.gov/ZXBsXP)

 

in vitroのデータではありますが、世界的な権威的科学誌であるNatureにもこれを支持する研究報告が出ました。

 Nature 1980; 284: 629-631. (http://1.usa.gov/YTTIVC)

 

全体的に高用量ビタミンC療法に追い風の時代だったようです。しかし残念なことに、これらは全て「ランダム化比較試験」といって、ビタミンCを投与される患者さんとプラセボを投与される患者さんが、無作為的に割り付けられる手法に従っておらず、臨床試験としてはやや信頼性に欠けるデータだったわけです。

  

一方、その後メイヨークリニックの医師らが1979年と1985年に進行期癌に対する「高用量ビタミンC vs. プラセボ」の2つのランダム化比較試験を実施し、「生存期間を全くもって延長しない」とその抗がん作用を完全否定したのです。その際のビタミンC10g/日を連日経口内服するというものでした。

 N Engl J Med. 1979; 301: 687-690. (http://bit.ly/ZXD7N2), N Engl J Med. 1985; 312: 137-141. (http://bit.ly/XbzKo1)

  

臨床試験の質としては後者の方が高く、しかもそれがN Engl J Medという超一流ジャーナルだったもんですから、「ビタミンCに抗がん作用なんかあるわけないよね~」とレッテルづけされ放置されたのです。暗黒時代の到来です。

 

ポーリング&キャメロンは起死回生を図って、1991年にも進行期癌における高用量ビタミンC静脈投与の有効性を再び報告します。しかしこれが、性懲りもなく非ランダム化比較試験だったのもんですから見向きもされず、三流雑誌(ゴメンナサイ(^_^;))にしか取り上げてもらえません。逆に、同一グループだけからの再現性のないデータには余計に胡散臭さが漂ってしまいます。

 Med Hypotheses. 1991; 36: 185-189. (http://bit.ly/ZXvN3X)

 

しかし、ビタミンCは不死鳥のように蘇ります。同じ量のビタミンCでも、経口内服と静脈投与では血液中の濃度の最高到達地点に明らかな差があること(Ann Intern Med. 2004; 140: 533-537. (http://bit.ly/YTECzn))に続き、米国立がん研究所が高用量ビタミンCを静脈投与すると、in vitroおよびin vivo(マウス)共に正常細胞にはダメージを与えずに腫瘍細胞だけを選択的に殺傷できること(PNAS 2005; 102: 13604–13609. (http://1.usa.gov/YT92f2), PNAS 2008; 105: 11105-11109. (http://1.usa.gov/YTPm0t))を発表し、再びスポットライトを浴びることになったのです。「それ見たことか!経口内服じゃダメなんだ!静脈投与じゃなきゃダメなんだ!」という静脈投与至上主義がここに誕生したのです。

 

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では続きは第2「高用量ビタミンC療法野 <臨床試験編>」へ。

 

3月11日を迎えて

東日本大震災から2心より哀悼の意を申し上げます。

 

2年前のこの日、何の罪もない多くの方々の命が失われました。命を繋ぎ止めることができた方々も今なお厳しい生活を余儀なくされていることと思います。生死を分けた所以や受けた被害の大小は個々の能力であるとか仁徳であるとか、そんなものに依存したものでは一切なく、まさに運命だったとしか言いようがありません。

 

とは申しているものの私個人は東北地方に居住した経験もなく、親戚や知人がいるわけでもありません。東北に対して特別な感慨を持ってはいませんでしたし、また直接的に被害を受けたということでもありません。震災においては微々たる募金をしたり東北を旅行したりして、自己満足的に関わっているだけの人間です

 

医師でありますから、現地に赴けば何某かのお役に立てることがあるかもしれません。しかし、今現在自分が置かれている立場や環境を投げうつ気概もなく、恥ずかしながら復興に貢献しているなどとは口が裂けても言えません

 

しかしある個人的な経験をもとに、被災された方々に、特に津波に巻き込まれて溺死されたであろう方々のご遺族に伝えられることあるのではと思っています

 

その個人的な経験を綴ってみます

 

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私には大学に入学した18歳の時に海水溺水で生死を彷徨った経験があります。

 

まだ入学式が終わって間もない頃でした高の部活動ではバレーボールをしていた私は、大学はもっとこう華やかで、女性陣から黄色い声援や憧れの眼差しを投げかけられるような華やかなスポーツをしてみたいと夢想していました。そんな折に、ヨットで真っ黒に日焼けした爽やかな先輩たちに声をかけてもらい「これだ!」と即決したのです。

 

江ノ島で催されたヨット試乗会に意気揚々と参加した私は、快晴の中、一人の先輩と一緒に沖に出て行きました。もちろん救命胴衣は着用していました。良い風が吹いていたためか、なんとなくの流れでトラピーズ体験(ヨットの外に体を乗り出すやつ)をしようということになり、ハーネスをつけて待機していました。

 

んな時、突発的に強い風が吹いてヨットが横倒しになってしまったのです。ハーネスを着用していた私は、ヨットの倒れた側の海面下に引き込まれてしまいました。本来、ハーネスは簡単に外せる仕組みなのですが、外し方教わらずに乗っていた私は、完全にパニック陥りました。必死でハーネスを外そうともがいたのですが、全く外せる見込みはありません

 

しかし、江ノ島の沖で一人もがいている、ただただ頭の中が真っ白というだけで、「苦しい」とか「怖い」といった感情は微塵も湧いてきませんでした。

 

どのくらいの時間もがいていたかは分かりませんが、「もうダメだ」と覚悟を決めて息継ぎをした瞬間のことです。の中海水が勢いよく流れ込んできて、パニックは即座にえも言われぬ幸福感へと変化し、意識途絶えました

 

その時間は恐らく秒単位だったとは思うのですが、そんな瞬時に色々な感情を持ったことを記憶しています。ほんの一瞬ですから「考えた」というより「感じた」としか言いようがないのですが。

 

「人は死ぬ前に走馬灯を見るって聞いたけどまるで見えないじゃんって想像してたより全然苦しくないじゃん」「死って下手に助走が長いよりも一瞬の方が受け入れやすいのかもな」など感じました。

 

いささか不謹慎な表現かもしれませんが「ふぁっ?俺ってこんなにあっさり死ぬ雑魚キャラだったのか、ウケる(笑)」と余裕を持って死を受け入れました。「○○ちゃん(当時の恋人)の部屋とか風呂場とか自由に覗けるんじゃね(♡)」などと妄想を逞しくすらしました。

 

そして両親に対して「私を産み、育ててくれたことを心から感謝しています」と謝する時間も、親孝行もせずに親より先に旅立つ不孝をお許しくださいと詫びる時間も、「これからは僕がみんなを見守っていきたいです」と願う時間も、十分にありました

 

私の場合、不思議なことに後ろ向きな感情とは一切無縁でした

 

救い出され一命を取りとめることができましたその後に展開された諸々(鼻から入れられた胃管、皆さんの面前で挿入された尿道カテーテル、口をこじ開けられて突っ込まれた気管チューブ自分のリズムとは全く異なる調子で送り込まれる酸素などなど)の方が、よっぽど苦しくて辛いものでした

 

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この事故の前後で人生観が変わったか、という問いには明確には応えられません。しかし「人間は死と隣り合わせ生きている」ことを体感したのは事実ですそして「生が善で死は悪だ」などということはないのだ、ということを確信しました。

 

そして、私が強く申し上げたいのは、この溺れている僅かな時間に苦しい」とか「怖い」といった感情は露ほど抱かなかった、ということです。本当に瞬間的な出来事ではありましたが、大切な人との別れを思う時間が十分にあったということなのです。そのためか、未だに海に対する恐怖心は微塵もありません

 

想像するに、「寂しかっただろう」「怖い思いをしたんじゃないか」「もがき苦しんだに違いない」と心を痛めているご家族も大勢おられると思います。もちろん、全員が全員同じ思いだったと断言することなど到底できません。でも、私の個人的な経験からは、溺死は決して苦しいものではないと思うのです。

 

このようなことを申し上げても、亡くなられた方々が生まれ変わるものではありません。しかし私の体験が、皆さんの心の痛みをほんの僅かでも和らげられれば、そして皆さんが歩を進めることの微々たる力になることができれば幸いです

近藤誠「医者に殺されない47の心得」

慶應義塾大学病院放射線科講師である、言わずと知れた近藤誠医師の新著「医者に殺されない47の心得」を読んだ。実質的には47どころか4の心得くらいに集約されている。概ね「医者は信用するな」「私は信じていい」「原始的に生きろ」「ピンピンコロリを目指せ」くらいのもんで、全229ページの文庫だが頑張れば10ページくらいの冊子にまとめられるだろうと思う。フリーペーパーとしてコンビニなんかに置いといた方が、効果的に自説を拡散できるんでないの、などと思ってみたり。

 

しかし、思いの外に頷いてしまう記述も多い。過剰検診に過剰検査、過剰診療、ポリファーマシー、タバコ、サプリメント脳ドックアンチエイジングに対する批判には完全に同意するし、細胞免疫療法を含めた「がん詐欺」商売を盛大に批判している部分では、思いがけず仲間意識すら芽生えそうな事態にまで陥りかけたわ。必ずしも類は友を呼ぶわけではなく、あくまでも孤高のトンデモを気取るわけね。慶應のプライドだろうか。

 

また、がん性疼痛への麻薬や放射線治療の積極使用を勧めている部分なんかも評価したい。セカンドオピニオンとかタクティールケアとかリビングウィルの重要性を指摘している辺りでも、自分の思考との共通点を見出しりして。

 

パラダイムシフトでも起こったんじゃないのか?との心配もどこ吹く風、相変わらずの「抗がん剤は効かない」「インフルエンザワクチンを打ってはいけない」の近藤節が炸裂する。新たに子宮頸がんワクチンも激しくディスってる(←NEW)。

 

私の知るところでは、アンチインフルエンザワクチンでその名を轟かせているのは、近藤誠医師の他にも浜六郎医師、林敬次医師、山本英彦医師、母里啓子医師などがいる訳だが、口を揃えて「むしろインフルエンザにかかって免疫をつけると、その後かかりにくくなります」などと愚の骨頂を代表したようなおバカ発言をしてしまうのは残念だ。

 

加えて、「効果が怪しい」「副作用がある」「前橋レポート(http://bit.ly/12BVnjM)を知らないのか」「コクランライブラリー(http://bit.ly/Z7WnWJ)を見てみろ」「製薬会社の陰謀だ」と同じ文言を繰り返しているが、前橋レポートの信頼性が低いことは自明だし(http://togetter.com/li/441229)、コクランはワクチン接種を否定しているわけではない。それから、インフルエンザワクチンには、れっきとした間接防御効があることが知られている(NEJM 2001; 344: 889-896(http://bit.ly/Z7UPMh), PLosOne 2011; 6: e26282(http://bit.ly/12BUKa3))。しかも、どちらも日本の学童集団接種を対象にしたものだ。

 

つまり、インフルエンザワクチンはあなたがたを守るだけが目的じゃなくて、あなたがたがインフルエンザワクチンを打たなかった結果として私達の死亡率が上がるっていうことなの。逆に言うと、私達がインフルエンザワクチンを打っているからこそあなたがたが守られているわけ。「ええどうぞどうぞ、あなたがたはお好きなだけインフルにかかればいいですよ」ではすまされない。あなたがたのエゴで死人が出てる可能性をお考えになって!

 

それから「本物のがん」と「がんもどき」をうまいこと鑑別する方法を示して欲しい。近藤医師の論法は全て後出しじゃんけんだから無敵なのよこれが。「人が死ねば本物のがん」で「死ななければがんもどき」っていうね。「手術や放射線で完治したならがんもどき」っていうね。人が死なないと本物のがんを言い当てられないわけ。その方法を示さないと彼の存在意義ないと思うの。

 

その他にも目を疑う記述も多い。

 

特に看過できないのは「何種類も服薬していて体調がすぐれない、認知症、ふらつきなどの症状が出ている場合は『薬を全部やめてみてください』とアドバイスします。やめても薬効はしばらく続き、なだらかに下降していくので『禁断症状』が出ることなく、ほぼ全員の体調が好転します」のくだりだ。本当にそんなこと言っていいの?

 

急にやめると離脱症状が出る薬剤って少なくないよ。H2受容体拮抗薬とか、ベンゾジアゼピン系や選択的セロトニン再取り込み阻害薬なんかの向精神病薬とか、ドパミン作動薬とか、特にステロイドなんか服用してたら本当にマズいと思うよ。

 

アナフィラキシーショックは『神経系や心臓の生理機能が弱ったりしている場合』に起こる」とかね。生理機能なんか関係ないでしょ。アナフィラキシーショックは生理機能なんかに関係なく起こる時は起こるでしょ。適当なこと言わないで!

 

がん細胞は自分の免疫をかいくぐって出てきたものだから、「どんなに免疫力を高めてもがんを防げない(これは頷けるぞ)」と言った直後に「抵抗力が落ちるとがん細胞が信じられない増殖の仕方をする」と言ってみたり。両者が矛盾していることにお気づきになって!

 

「のどが痛ければハチミツなどをぬれ」「(高熱が出たら)水風呂に入ってみるのもいいかと」「路上生活者や五木寛之が髪がフサフサなのは髪を洗わないから」などと平然と言ってみたりする辺りも、信頼性を落としている所以の一つかとも思う。

 

アルコール摂取のメリットを強調するくだりでは、「エタノールが肝細胞がんの経皮的注入法や静脈瘤の内視鏡的硬化療法に使用されている」ことを引き合いに出しちゃったりしている。それってアルコール飲むのと全然関係ないよね。

 

あとやたらに「ピンピンコロリ」を推奨しているけど、ピンピンコロリって死んだ当人はいいけど、残された家族は大変なの知らないの?気持ちの整理とか色んな手続きとかさ、すごく大変なの。そこらへんを整理してから死んでくれると助かるわけ。インフルエンザの件といい、結局は自己中心的なのよね。

 

印象としては、この著は医療依存度が90パーセンタイル以上くらいに含まれる方々を対象とした場合には、意外に良著となる可能性を秘めている気がするが、残りの人にはほぼほぼ時間のムダというか、むしろ害をなすというか。現実には、「近藤先生がこのように仰ってるぞ!」と医療不信者の方々のプロパガンダになっているわけなのだが。

「血液クレンジング」

(2012年12月31日にtwitterでつぶやいたものの転載)

 

オゾン療法(血液クレンジング)をPubMedで調べてみた。Autohemothrapyでヒットしたのは112件、臨床試験は12件。Autohemotransfusionでヒットしたのは72件、臨床試験は4件。この中で英語のabstractがあるものをreviewしてみる。

 

臨床試験の多くが末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)を対象とし、慢性肝炎が少々だが、RCTと思われるものはPAODに対する1報と重症肝炎に対する1報のみ。

 

ポルトガルの同一グループが最多の5報を報告しているが、その内の4報ではPAOD患者における臨床データで過酸化物質、凝固マーカー、炎症性マーカー、サイトカイン、NK活性、脂質代謝などの変動を測定し「有害事象がない」と結論づけている。

 

残りの1報では、PAODを有する維持透析患者において「無痛歩行距離が有意に延びた」としている。この報告の対象患者は10症例で、前方視の単盲検交差試験と記載されている(Int J Artif Organs 2004;28:234)。

 

RCTと思われる1報目はイタリアから。同じくPAOD患者28例をオゾン療法とプロスタサイクリンに無作為割付し、掻痒感、疼痛、足重感などの症状が有意に改善したとしている(Int J Artif Organs 2005;28:1039)。

 

2報目のRCTと思われる報告は中国から。重症慢性肝炎患者85症をオゾン療法とコントロールに無作為割付し、腎血流と腎機能のみならず、生存率も有意に改善したと(Chin Med J 2010;123:2510)。

 

その他「エジプトからHCVに対するオゾン療法でAST、ALT、HCV-PCRが改善(J Altern Complement Med 2011;17:259)」「伊からPAODに対するオゾン療法で赤血球変形能や血液粘稠度が改善(Ann Hematol 2001;80:745)」等。

 

臨床試験以外では難治性頭痛、気管支喘息精神疾患、単純ヘルペスなどに対する治療の症例報告やケースシリーズ、あるいは基礎研究がある。

 

特徴は、ポルトガル、イタリア、ロシア、ウクライナブルガリアなど非英語圏の欧州が殆ど。英語圏からの報告は皆無。掲載雑誌のIFは0.8〜2が主体で、それより良いものとしては2.615のAnn Hematol.が1報、3.263のMediators Inflamm.が1報。

 

PAODに関しては有害事象が少なくそれなりの効果あるかもしれず完全否定できるものではないが、質の高い臨床試験が少なく、また標準治療と比較試験でもないので、推奨の域に入るのは到底困難。その他の疾患に関しては言わずもがな。

 

赤坂AAクリニックのHP(http://t.co/s0lrNyrs )を覗いてみる。血液クレンジング療法の適応として「①健康や予防:免疫強化・血液浄化・血液循環改善・冷え性改善・疲労回復・活性酸素除去 ②病気治療:脳梗塞心筋梗塞・糖尿病・癌・膠原病・中枢神経疾患」を挙げている。

 

風呂敷を広げ過ぎなのは明らか。誇大広告を通り過ぎて虚偽と言わざるを得ないレベル。許されるのは末梢動脈閉塞性疾患のみであり、その他のは完全なる疑問符。健常人を対象とした予防にまで守備範囲を広げるしたたかさ。おまけに肝炎は記載していないのは不勉強を露呈しているのかもしれない。

 

その他「40年以上前にドイツで開発され自然治癒力を復活・強化する療法としてヨーロッパでは認知され広く一般に行われています」の記載が見て取れる。「歴史の古さ」を売りにするのはいかにも。他に売りがないことの裏返しか?この世に華佗の麻沸散で手術を受けたい人がいるとは思えない。

 

「英国のエリザベス女王の母君 クイーンマムが、老化予防のために定期的に血液クレンジング療法をお受けになっておられたことでも有名で、その安全性・有効性は広く認知されています」の記載も。また道端カレンさんがブログでステマ活動を展開している(http://t.co/m9wdqPKS)。

 

「高名な人物が推奨するなら間違いない」という思考回路もいただけない。当時としては長寿であった徳川家康が水銀を飲んでいたからといって、健康のために水銀を飲もうなんて思う人はいないでしょう。知的水準に問題があるかもしれないブルジョワこそが最高の鴨なわけで(ry。

 

続いて日本酸化療法研究会のホームページ(http://t.co/e5yAhdhw)を見てみる。これまた、何の引用もない誇大表現で溢れかえっている。中盤には「血液クレンジングを受けられた患者様の感想」コーナー。賞賛の嵐。あまりにも胡散臭すぎる。

 

更に、「血液クレンジングが劇的に効いた症例」の症例報告を2例記載。しかし考察はオール仮説での展開。最後にはちゃっかり高濃度ビタミンC点滴との併用を推奨するというコメントのおまけ付き。

 

血液クレンジングを健常人や根拠のない疾患患者に実施している医療者は、頭を冷やす意味合いでオゾンの充満した部屋で脳クレンジングでもして頂いた方が良いのではないかと思う。