yocinovのオルタナティブ探訪

安価で安全な代替・補完医療を求めて

「血液クレンジング」

(2012年12月31日にtwitterでつぶやいたものの転載)

 

オゾン療法(血液クレンジング)をPubMedで調べてみた。Autohemothrapyでヒットしたのは112件、臨床試験は12件。Autohemotransfusionでヒットしたのは72件、臨床試験は4件。この中で英語のabstractがあるものをreviewしてみる。

 

臨床試験の多くが末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)を対象とし、慢性肝炎が少々だが、RCTと思われるものはPAODに対する1報と重症肝炎に対する1報のみ。

 

ポルトガルの同一グループが最多の5報を報告しているが、その内の4報ではPAOD患者における臨床データで過酸化物質、凝固マーカー、炎症性マーカー、サイトカイン、NK活性、脂質代謝などの変動を測定し「有害事象がない」と結論づけている。

 

残りの1報では、PAODを有する維持透析患者において「無痛歩行距離が有意に延びた」としている。この報告の対象患者は10症例で、前方視の単盲検交差試験と記載されている(Int J Artif Organs 2004;28:234)。

 

RCTと思われる1報目はイタリアから。同じくPAOD患者28例をオゾン療法とプロスタサイクリンに無作為割付し、掻痒感、疼痛、足重感などの症状が有意に改善したとしている(Int J Artif Organs 2005;28:1039)。

 

2報目のRCTと思われる報告は中国から。重症慢性肝炎患者85症をオゾン療法とコントロールに無作為割付し、腎血流と腎機能のみならず、生存率も有意に改善したと(Chin Med J 2010;123:2510)。

 

その他「エジプトからHCVに対するオゾン療法でAST、ALT、HCV-PCRが改善(J Altern Complement Med 2011;17:259)」「伊からPAODに対するオゾン療法で赤血球変形能や血液粘稠度が改善(Ann Hematol 2001;80:745)」等。

 

臨床試験以外では難治性頭痛、気管支喘息精神疾患、単純ヘルペスなどに対する治療の症例報告やケースシリーズ、あるいは基礎研究がある。

 

特徴は、ポルトガル、イタリア、ロシア、ウクライナブルガリアなど非英語圏の欧州が殆ど。英語圏からの報告は皆無。掲載雑誌のIFは0.8〜2が主体で、それより良いものとしては2.615のAnn Hematol.が1報、3.263のMediators Inflamm.が1報。

 

PAODに関しては有害事象が少なくそれなりの効果あるかもしれず完全否定できるものではないが、質の高い臨床試験が少なく、また標準治療と比較試験でもないので、推奨の域に入るのは到底困難。その他の疾患に関しては言わずもがな。

 

赤坂AAクリニックのHP(http://t.co/s0lrNyrs )を覗いてみる。血液クレンジング療法の適応として「①健康や予防:免疫強化・血液浄化・血液循環改善・冷え性改善・疲労回復・活性酸素除去 ②病気治療:脳梗塞心筋梗塞・糖尿病・癌・膠原病・中枢神経疾患」を挙げている。

 

風呂敷を広げ過ぎなのは明らか。誇大広告を通り過ぎて虚偽と言わざるを得ないレベル。許されるのは末梢動脈閉塞性疾患のみであり、その他のは完全なる疑問符。健常人を対象とした予防にまで守備範囲を広げるしたたかさ。おまけに肝炎は記載していないのは不勉強を露呈しているのかもしれない。

 

その他「40年以上前にドイツで開発され自然治癒力を復活・強化する療法としてヨーロッパでは認知され広く一般に行われています」の記載が見て取れる。「歴史の古さ」を売りにするのはいかにも。他に売りがないことの裏返しか?この世に華佗の麻沸散で手術を受けたい人がいるとは思えない。

 

「英国のエリザベス女王の母君 クイーンマムが、老化予防のために定期的に血液クレンジング療法をお受けになっておられたことでも有名で、その安全性・有効性は広く認知されています」の記載も。また道端カレンさんがブログでステマ活動を展開している(http://t.co/m9wdqPKS)。

 

「高名な人物が推奨するなら間違いない」という思考回路もいただけない。当時としては長寿であった徳川家康が水銀を飲んでいたからといって、健康のために水銀を飲もうなんて思う人はいないでしょう。知的水準に問題があるかもしれないブルジョワこそが最高の鴨なわけで(ry。

 

続いて日本酸化療法研究会のホームページ(http://t.co/e5yAhdhw)を見てみる。これまた、何の引用もない誇大表現で溢れかえっている。中盤には「血液クレンジングを受けられた患者様の感想」コーナー。賞賛の嵐。あまりにも胡散臭すぎる。

 

更に、「血液クレンジングが劇的に効いた症例」の症例報告を2例記載。しかし考察はオール仮説での展開。最後にはちゃっかり高濃度ビタミンC点滴との併用を推奨するというコメントのおまけ付き。

 

血液クレンジングを健常人や根拠のない疾患患者に実施している医療者は、頭を冷やす意味合いでオゾンの充満した部屋で脳クレンジングでもして頂いた方が良いのではないかと思う。